家に智絵里軍団

シンデレラガールズと雑談のパッチワーク(主にプロレス・自転車談義)

過去SS再掲載シリーズ

To be,or not to be

今は秋。瞳子はそれを思い出す。 足を踏み出すたびに、靴の下でかさかさと軽い音を立てて崩れる落ち葉たち。細い木枝の隙間から見えるのは、高い青空と白いうろこ雲。ときおり傍を吹き過ぎてゆく風は、絶妙なまでに涼しく、心地良い。 そんな、どこを切って…

私を止める瞳子

眠れぬ夜は幾度も過ごしたけど、今夜がいちばんかもしれない。 ベッドの中で寝返りを打ちながら、瞳子はそう思った。目を瞑っても、布団を頭からかぶっても、仰向けでも、うつ伏せでも、枕を抱えても。どんな格好になっても、なかなか眠気はやってこない。 …

ホワイトアウト・クリスマス

白い濃霧の朝だった。 背の高いことだけがかろうじて分かる輪郭の曖昧な正門をくぐり抜けた祐巳は、ほとんど手さぐりしながら銀杏並木に囲まれた校舎への道を歩いていた。生まれて初めて見る高濃度の霧である。手を伸ばすと指の先が霞んでしまうほど。五里霧…

シュレディンガーの狸

今にも雨が降り出しそうな、澱んだ曇り空の下。 薔薇の館が見下ろす中庭の一角に、五人の生徒が集っていた。不気味に生ぬるい風が、館の周りを、そして五人のあいだを吹き抜ける。 「『シュレディンガーの猫』を知ってるかしら?」 おもむろに口を開いたのは…

薔薇の館は地獄だ!

1. 彼女は一人ではなかった。 定員オーバーだわ、と小笠原祥子は思った。 いまこの部屋には六人の人間がいる。伝統的にこの部屋は九人集合が基本で、それ以上集まることもたびたびある。物理的には充分すぎるほど余裕があるはずだ。 それなのに、まるで満…

目薬をさして

たそがれどき夕日色に染まった新聞部の部室inクラブハウス お姉さまの奏でるキーボード打撃音をBGMに真美は赤ペン片手に原稿のチェックをしていた (夕日の赤と赤ペンの赤)(このふたつの赤を、同じ『赤』という言葉で表現しても良いものだろうか) な…

通過儀礼

私の名前は高知日出実。記者だ。山口真美さまが私のお姉さまだ。 ただし、今から書くのは、私が真美さまの妹になる以前の出来事である。 新聞部に入部して少し経ち、徐々に一人前の仕事を任されることも増えてきたある日の放課後。私は、部室で原稿書きに精…

フローズン・ローズ

ひゅう、という鋭い音を立てて、凍えるような北風が吹き抜けていく。 「はっくしゅん!」 風に対抗するかのように祐巳はくしゃみをした。洟をすすりながら、背中を丸め身を縮こまらせて寒さに耐える。コートの下にカーディガンを重ね着して手袋をはめてマフ…